〒870-0044
大分市舞鶴町一丁目4-1
担当 平松拓也
E-mail:yulinken@nakamura-hosp.or.jp
TEL 097-536-5050
FAX 097-573-8030

ゆーりん研用語集

以下の表は、2002年国際禁制学会の用語基準における下部尿路症状(lower urinary tract symptoms: LUTS)の【蓄尿症状】、【排尿症状】、【排尿後症状】の3分類と、【その他】の項目とに分けて整理している。
また意味/定義においては、以下の5つの文献から一部引用している。

【引用文献】
下部尿路機能に関する用語基準  [日本排尿機能学会誌,14(2), 278-289, 2003] ¹⁾
ステッドマン医学大事典  [改定第5版.2002] ²⁾
医学大辞典  [第2版.2000] ³⁾
看護学事典 [第2版.2011] ⁴⁾
ストーマ・排泄リハビリテーション学用語集 [第3版.2015] ⁵⁾
ICS:International Continence Society(国際禁制学会)⁶⁾

用語 英語表記 意味/定義
【蓄尿症状】 Sotrage symptoms 蓄尿時にみられる症状。蓄尿←尿失禁なく膀胱内に尿を貯めること。⁴⁾ 
昼間頻尿 Increased daytime
frequency
昼間の排尿回数が増加した状態。排尿回数は個人のもつ尿量と膀胱容量とで決定されるが、一般には、健常成人で昼間4~6回とされている。³⁾
夜間頻尿 Nocturia 夜間睡眠中に排尿のため1回以上起きなければならないという愁訴である。⁶⁾
尿意切迫感 Urgency 急に起こる、抑えられないような強い尿意で、我慢することが困難である。切迫性尿失禁を伴うことも伴わないこともある。⁴⁾
尿失禁 Urinary incontinence 不随意の排尿により下着や寝具に漏らしてしまうこと。幼少時・学童の尿失禁は遺尿症ともよばれる。その他は、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、反射性尿失禁、溢流性尿失禁(奇異性尿失禁)、機能性尿失禁、真性尿失禁に大別されるが、これらの病態は複雑に交錯している。⁵⁾
腹圧性尿失禁 Stress urinary
incontinence
咳やくしゃみなど、腹圧が加わることによって起こる尿失禁。男性でも前立腺切除術後に起こることがあるが、女性の場合は妊娠・出産、肥満、閉経、便秘などが関連因子となる。⁴⁾
切迫性尿失禁 Urge urinary
incontinence
強い尿意を感じた瞬間に膀胱収縮を起こし、不随意な尿漏れを起こす状態。感染(膀胱炎など)で膀胱が過敏な状態、または脳血管障害などにより、排尿を随意的に抑制する高位排尿中枢から橋排尿中枢への経路が障害されることにより起こる。⁴⁾
混合性尿失禁 Mixed urinary
incontinence
複数のタイプの尿失禁が混在するもの。女性では、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の混在が多い。⁴⁾
【排尿症状】 Voiding symptoms 排尿相(尿を出すとき)に見られる症状。同様の意味で「排出症状」または「尿排出症状」が使われることがある。
尿勢低下 Slow stream 尿の勢いが弱いという愁訴。通常は、以前の状態や他人との比較によって自覚する。
尿線分割・尿線散乱 Splitting or
spraving
尿線が排尿中に分割・散乱すること。
尿線途絶 Intermittent stream 尿線が排尿中に1回以上途切れるという愁訴。
排尿遅延 Hesitancy 排尿開始が困難で、排尿準備ができてから排尿開始まで時間がかかるという愁訴。
腹圧排尿 Straining 排尿の開始、尿線の維持または改善のために、力を要するという愁訴。
終末滴下 Terminal dribble 排尿の終了が延長し、尿が滴下する程度まで尿流が低下するという愁訴。
【排尿後症状】 Post micturition
symptoms
排尿直後に見られる症状。
残尿感 Feeling of
incomplete emptying
排尿後に完全に膀胱が空になっていない感じがするという愁訴。
排尿後尿滴下 Post micturition
dribble 
排尿直後に不随意的に尿が出てくるという愁訴。 通常、直後とは、男性では便器から離れた後、女性では立ち上がった後のことを意味する。
用語 英語表記 意味/定義
夜間多尿 Nocturnal polyuria 24時間の尿排出量のうち夜間の割合が多い場合をいう。この夜間尿量には就寝前の最後の尿は含まれず,朝に起床後の最初の尿は含まれる。夜間に20%(若年成人)から33%(65歳以上)以上の尿が産生されれば,夜間多尿があるとされる。
神経因性膀胱 Neurogenic bladder 神経系疾患により下部尿路機能障害を引き起こすものを神経因性膀胱と総称する。原因となる脳の疾患としては脳血管障害,パーキンソン病,多系統萎縮症,脳腫瘍,認知症などがあげられる。また,脊髄・脊椎疾患としては脊髄損傷,多発性硬化症,脊髄腫瘍,脊椎変性疾患,脊髄血管障害,二分脊椎などがある。さらに,末梢神経の障害から核下型の神経因性膀胱を生じるものとして,糖尿病や骨盤部手術による神経障害があげられる。
過活動膀胱 Overactive bladder
(OAB)
尿意切迫感を主症状とし,通常は頻尿や夜間頻尿を伴い,時に切迫性尿失禁を伴う症状症候群である。すなわち,過活動膀胱は症状症候群であり,疾患ではないことに留意する必要がある。過活動膀胱の原因となる病態・疾患は多彩で,神経疾患に起因する神経因性と,明らかな神経疾患が見出せない非神経因性とに大別される。前者では脳血管障害,パーキンソン病などの神経変性疾患,種々の脊髄・脊椎疾患などが含まれる。後者では加齢,骨盤底の脆弱化,骨盤臓器脱が原因となるものなどがあるが,原因不明のものも少なくない。
尿閉 Urinary retention 急性尿閉とは,急に尿をまったく排出することができなくなり,通常は膀胱に強い痛みがあり,触診や打診で膀胱が認知できる状態である。慢性尿閉とは,痛みはないが,排尿後にも触診や打診で膀胱を認知できる状態である。このような患者では,尿失禁がみられることがある(溢流性尿失禁)。急性・慢性を問わず,尿閉とは尿をまったく排出できないか,排出するのが困難な状態を意味し,多量の残尿(300mL以上が目安)が常時あることと同義と考えてよい。
溢流性尿失禁 Overflow incontinence 慢性尿閉に伴い膀胱内圧が上昇し,ついには尿道閉鎖圧を超えて尿が溢れ出てくる状態をいう。尿意切迫感を伴うこと,体動時(腹圧上昇時)に起こること,尿意がなく無意識に漏れること,持続的に漏れることなど,関連する症状は多彩である。慢性尿閉に伴う尿失禁は放置すると腎機能障害を招くので,見逃してはならない病態である。
機能性尿失禁 Functional urinary
incontience
排尿機能は正常にもかかわらず、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる尿失禁。例えば、歩行障害のためにトイレまで間に合わない、あるいは認知症のためにトイレで排尿できないなどである。 この尿失禁の治療は、介護や生活環境の見直しを含めて、取り組んでいく必要がある。 
用語 英語表記 意味/定義
【その他】    
膀胱訓練 Bladder training トイレに行きたくなっても、すぐに行くのではなく我慢するといったものである。初めのうちは5分位を目安にして徐々に10分、15分と我慢する時間を長くしていく。できるだけリラックスした環境で行うほうがよく、まずは自宅のトイレから始めるとよい。膀胱訓練は1日1~2回でも十分に効果があるといわれている。
骨盤底筋訓練 Pelvic floor
muscles training
弱った骨盤底筋を鍛え、筋力をつけることで、臓器が下がるのを防ぐ。また、肛門や腟を締める訓練をすることで、尿道を締めることができ、尿漏れの症状を改善できる可能性がある。過活動膀胱や腹圧性尿失禁に効果がある。
排尿日誌 Micturition diary
Bladder diary
Voiding diary
排尿日誌は、排尿時刻とそれぞれの排尿量、さらに尿失禁の有無などについて患者自身が記録するもので、半他覚的な検査として排尿パターンの評価や失禁回数の評価に用いる。朝起きてから24時間の排尿状態を、目盛りつきコップなどを用いて、排尿時刻とそのときの排尿量を記録し、尿失禁の有無についてもその都度記録する。できれば3日間つけると評価しやすい。
排尿介助 Urinary care  排泄用具を用いて,便や尿を排出させること。排泄に伴うトイレでの一連の行為(衣類の着脱,排泄姿勢をとる,排泄後の清潔行為,排泄物の後始末)の不足部分を補うこと。 
蓄尿器/蓄尿びん/
尿き
urinal 尿を排泄する容器。 ²⁾ トイレに行けない患者が床上排尿のために用いる容器。開口部が円形で筒状のものが男性用。女性用は広口のくちばし様で、その先端を会陰下部に密着させて使用する。⁴⁾
排泄用具 devices for
urination and
defecation (evacuation) 
排泄のために使用する用具の総称。【ポータブルトイレや尿瓶、おむつなど】⁵⁾
オムツ
パッド(失禁用品)
Diaper
swaddling
bands
現在使用されているおむつは、布おむつとおむつカバーの組み合わせと紙おむつに分けられる。ギャザー型やパンツ式のもの、また、尿漏れ用の各種パッド類もある。パンツ式のおむつや尿漏れパッドの活用は、消極的になりがちな高齢者の活動をより積極的にし、自立を高める結果となっているが、その利便性から、長期にわたり安易におむつを着用させることによって、寝たきりを増やしてしまうという問題もある。⁴⁾
排尿日誌 micturition diary
(bladder diary)
一日の排尿状態を客観的に評価するため排尿時間と排尿量、失禁の時間・量・失禁の状況,飲水状態などを記録する日誌。 ⁵⁾

作成日:平成29年4月1日
作成:排尿行為に関する用語整理ワーキングチーム