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排尿障害とは

排尿障害は大きく尿を貯めるときが問題になる蓄尿障害と尿を出すときに問題になる排出障害に分けられ、ほとんどの疾患はいずれかあるいは両方の障害が認められます。
代表的な疾患を以下に示します。

①過活動膀胱

尿が急に催したくなる病態(尿意切迫感)で男女問わず40歳以上の中高年層ではよくみられ、加齢とともに増加し全国に800万人以上の患者がいると推測されています。原因は様々で脳血管障害や脊髄障害後の神経因性の者の他に前立腺肥大症の初期や加齢などに伴う非神経因性のものが挙げられます。
治療は膀胱訓練や骨盤底筋体操などの理学的療法や抗コリン剤などによる薬物治療が挙げられます。

②尿失禁

大きく尿失禁のタイプは以下に分けられます。

1 腹圧性尿失禁 重いものを持ち上げるような労作時または飛び上がるなどの運動時、もしくはくしゃみまたは咳などにより、腹圧が上昇し尿道内圧を上回るため不随意に尿が漏れる。いずれの年齢層でもみられるが、女性に多く、特に出産後や更年期に多い。治療は骨盤底筋体操などの理学的療法や薬物治療が挙げられますが、重症の場合はテープを用いた尿道スリング手術(TVT,TOT)を行います。
2 切迫性尿失禁 急に尿意をもよおし我慢できずに尿が漏れる状態です。
過活動膀胱が主体となりこれに尿失禁を伴うものが切迫性尿失禁です。
治療は膀胱訓練や骨盤底筋体操などの理学的療法や抗コリン剤などによる薬物治療が挙げられます。
3 混合性尿失禁 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が両方とも認められる女性患者は多いことが分かっております。
4 溢流性尿失禁 排尿後にも膀胱内にたくさん尿が残っているために、尿があふれて漏れる状態です。重度の前立腺肥大症や膀胱の機能が著明に低下した神経因性膀胱に認められます。治療は残尿を減らすために男性の場合は前立腺の外科的治療、ほか神経因性膀胱の場合には間欠的自己導尿法などが行われます。
5 機能性尿失禁 器質的な排尿障害はありませんが、認知機能の低下や身体が不自由なことにより排尿が上手にできずに尿が漏れる状態です。他のタイプの尿失禁と同時に認められることが多いため、適切な薬物療法に加えてリハビリや介護による排尿の介助を行うことが有効です。

③神経因性膀胱

何らかの神経疾患が原因で蓄尿障害や排尿障害を認めるものです。
脳脊髄の上位中枢が障害を受けた場合(脳血管障害など)は蓄尿障害が、脊髄が障害を受けた場合(脊髄損傷の回復期や脊椎疾患など)には蓄尿障害、排出障害が、また末梢神経が障害を受けた場合には排出障害(糖尿病、骨盤手術後など)が主に認められます。
治療としては軽度~中等度の者であれば蓄尿障害が強い場合は抗コリン剤、排出障害にはα1遮断薬などの薬物療法が有効ですが、多量の残尿などを認める重度の排出障害の場合には間欠的自己導尿などが行われます。また二分脊椎などで膀胱が高度に萎縮しているような場合には膀胱拡大術などの外科的治療が行われる場合もあります。

④前立腺肥大症

前立腺は男性の膀胱近くで尿道を取り巻くように存在する臓器です。前立腺は40歳代から肥大が始まり50-60歳代から急速に進行します。この前立腺肥大に伴って、頻尿や尿意切迫感、尿の勢いの低下など多彩な症状が出現します。前立腺肥大症の場合、蓄尿症状と排尿症状が同時に現れることが多いとされています。治療は薬物療法が基本で、尿道を広げる作用のあるα1遮断薬、前立腺を小さくさせる抗アンドロゲン薬や5α-還元酵素阻害薬、また蓄尿症状が強い場合は抗コリン剤を追加することがあります。一方、薬物治療が奏功しない場合には経尿道的前立腺切除により肥大した前立腺を切除します。最近ではレーザーによる前立腺核出術なども行われています。